「測定」において大切なこと:再現性のある測定ができるかどうか
誘電率測定に限らず、測定機器の性能として非常に重要な項目に、「再現性」があります。測定機器を活用するユーザーは未知のパラメータを知りたいと思い、その測定機器を使用するはず。にもかかわらず、例えば3回測定して3回とも全く違う値になると、何を信じればいいのかわからなくなってしまいます。特に2つの被測定物を比較しようと思った際に、差があるのかどうかすらわかりません。例えば体重計で1か月前の体重と比較しようとしたとき、以下の結果だったとします。
| 1か月前 | 今日 | |
|---|---|---|
| 1回目 | 62.3kg | 59.0kg |
| 2回目 | 58.3kg | 64.5kg |
| 3回目 | 65.2kg | 60.1kg |
1ヶ月前と有意な差があるのかどうか、この測定結果ではわからないです。仮にこの人がダイエットをしているとしたら、効果が出ているのかどうかも分かりません。
一方で、優れた体重計で測定した場合の結果を見てみましょう。
| 1か月前 | 今日 | |
|---|---|---|
| 1回目 | 62.1kg | 60.3kg |
| 2回目 | 62.0kg | 60.6kg |
| 3回目 | 61.8kg | 60.5kg |
この結果からであれば有意な差があり、1か月前よりも体重が減ったことが分かります。同じものを測定したときに同じ値をだすことの重要性を実感いただけたのではないかと思います。
材料を測るうえでも、「どれだけ同じ結果が出るか(再現性)」はとても大切なポイントです。 測定の再現性が高いと、研究開発では材料のわずかな違いも見逃さずに捉えることができます。そのわずかな差も次の試作にフィードバックすることができます。製造の現場であれば、サンプルを安定してモニタリングできるようになります。わずかな差も見逃さず、量産される材料の個体差をより精度よく見極めることができます。結果として、質の高い品質管理が可能になります。
測定結果がばらつく要因は?
誘電率・導電率の測定において、そもそも測定結果がばらつくのはなぜなのでしょうか?大きく4つの理由が考えられます。
- 装置への試料設置ばらつき
- 測定システム系の計測誤差
- 試料の個体差
- 測定環境の差
上2つは装置の実力に関わる項目です。下2つは装置の能力とは別になりますが、測定ばらつきを考えるうえでは重要ですので、参考として記載します。装置の実力を確かめる場合、上2つの「装置への試料設置ばらつき」「測定システム系の計測誤差」の2つをチェックしましょう。
装置への試料設置ばらつき
全ての誘電率測定装置はそれぞれ所定の方法で試料を取り付けます。試料の設置の仕方が容易どうか、ばらつきを生みにくい設計になっているかどうか、が重要な確認項目になります。何度実施しても同じように設置できる装置ほど、再現性を保ちやすいです。一般に、治具にただ静置するだけよりも、ホルダ等できっちりと固定する方式のほうが設置ばらつきが小さくなります。
測定システム系の計測誤差
測定システム系の計測誤差は、誘電率や導電率の結果を算出するまでに得ている各種パラメータの誤差になります。ネットワークアナライザ、ケーブル、測定治具などに生じるノイズによってわずかにパラメータが変わることで、誘電率測定結果としても差が出てきます。
試料の個体差
ここからの2項目は、装置の能力とは直接関係ありませんが、測定ばらつきを考えるうえで重要な項目ですので、記載します。
試料の個体差については、試料の測定する部分によって値が変わるというものです。均一に生産していると謳っていても、生産ロットが違うと測定結果が変わる、シートの右端と左端で値が違う、といったことが頻繁に見受けられます。
EMラボの装置の場合、例えば「同じ」試料を測定した場合なら厚みが違っても同じ値になることを確認しています。詳しくはこちらの測定例をご覧ください。
測定環境の差
測定環境の差とは、測定を行おうとしている部屋の温度や湿度、空調の風などが挙げられます。測定環境が揺らいでいる場合、システムの揺らぎに加え、試料にも変化が生じます。一般に、温度や湿度が変わると素材の誘電特性は変化します。結果として、測定する部屋の温湿度が変わると、誘電率測定結果にも差が生じることがあります。
温度や湿度が変わったときに誘電率がどのように変化の一例として、以下の測定例もぜひご覧ください。
どのように再現性をチェックすればよいか
誘電率測定装置の再現性として確認すべき項目は、前述のうち「装置への試料設置ばらつき」「測定システム系の計測誤差」の2つです。では、この2項目を効率よく確認するにはどのように検証すべきでしょうか。おすすめは、「測定のたびに一度試料を取り外し再設置しながら、同じ試料を3~10回程度測定する」ことです。この際、試料を設置させる際に表と裏を入れかえることも有効です。通常、試料の表裏で誘電率が変わることは少ないです。試料が反っていた場合や、設計が不十分な測定治具では、試料の向きで誘電率の結果に差が出ることがあるので、合わせて確認することが有効です。

試料を出さずに測定再現性を評価すると危険!
「測定装置に試料を取り付けたのちに、10回連続で測定を行った」という測定条件を頻繁に耳にしますが、これは不十分な測定条件です。これでは、「測定システム系の計測誤差」については評価することはできますが、装置に試料を取り付けたまま固定し続けているので、「装置への試料設置ばらつき」について評価できていません。結果として、実際のユースケースを想定していない緩い条件での評価となってしまいます。条件が緩いため高い測定再現性を示しやすいのですが、惑わされないよう注意が必要です。
まとめ
本記事では、誘電率測定装置の再現性確認の重要性と、確認方法について解説しました。誘電率測定装置の再現性の確認方法として、以下を確認することが有効です。
- 再現性のデータを測定例からチェックする
- 再現性データの取得条件を見て、「装置への試料設置ばらつき」まで考慮された条件になっているかをチェックする
実際に導入してから再現性の低い製品であることに気付くと資金と時間を無駄にしてしまいます。導入前にしっかりとチェックし、ビジネスを最適な方向に進められる装置を見つけてください。
EMラボの装置は、測定再現性に非常に優れています。再現性の測定例については、全て装置から試料を取り外して複数回測定した場合の結果を掲載しています。以下の測定例からぜひ再現性の高さをご覧ください。



