「勝負素材の委託測定」「測定治具購入」という大きなイベントの前に
「技術の全てをかけて開発した新素材を測定してほしい」「自社に測定装置を導入して、測定の効率を高めていきたい」・・・会社にとって重要な場面を任せるメーカーを選ぶとしたら、安心して正確に測定できる測定装置メーカーを選びたいですよね。測定装置は世の中に幾つかある中で、各社が「こんな測定ができます!」と公開している「測定例」が、自分たちに合った装置を見つけるよりどころになります。一方で、測定例を鵜吞みにすると、こんなはずではなかった、、、と失敗してしまう可能性があります。本記事では、誘電率測定装置・導電率測定装置の測定例をどのようにチェックすると良いのか、そのポイントについて解説します。
測定例は「メーカーにとって都合のいいデータ」になっている!?
測定装置メーカーは、自社の製品が良い製品であるとアピールしたいため、測定結果が美しくに見えるように恣意的に加工します。一方、購入を検討している方や既に使用しているユーザーは正しく測定できる装置かどうかが知りたいだけです。つまり、両者の考えには乖離が発生します。メーカーの恣意的なデータに惑わされない方法を、測定装置メーカーである我々が、メーカー目線で包み隠さず記事にしています。
測定例の確認ポイント
周波数特性が載っているか?
周波数特性を確認することは測定の一貫性を確認する上で非常に重要です。ですが、装置の中には装置1つにつき周波数1点の測定のみに対応したものがあります。例えば共振器法に該当する装置です。これらの装置は単体では周波数特性を取ることはできませんが、多くの場合複数の周波数ラインナップがあり、装置を切り替えて同じ素材を測定することで周波数特性が取得できます。装置の完成度が高いメーカーは結果を周波数特性付きで公開しているケースが多いです。周波数特性の測定例がない場合、測定値がばらつくような結果しか取得できない装置であるという事情が隠れている可能性があるため、注意が必要です。

グラフの軸スケールが意味もなく大きくないか?
測定データを見たとき、プロットされた点が規則正しく並んでいるように見えると「きれいに測れている」と感じるのではないでしょうか。ですがy軸のスケールが適切に設定されているかを確認することは必須です。
以下のような例を見てみましょう。

縦軸をよく見ると、0~10とかなり大きい範囲に設定されています。y軸のスケールを測定値周辺だけにズームすると、A社のほうは測定が乱れていることが分かります。このように、スケールを大きくすることで安定したデータのように見せている場合があるので、注意が必要です。
目安として、フィルムや薄板のような固形試料の場合、誘電率だと実測値の10%程度、誘電正接だと実測値の最大値から10%程度の値に設定されていると実力を確認しやすいでしょう。粉体や液体などの測定の場合は、固形試料よりもはるかに測定が難しいため、固形試料の2倍程度に設定されていたとしても問題ありません。
測定難易度の高い試料の結果が載っているか?
誘電率測定において、測定することが「簡単」「難しい」試料があります。「簡単」な試料に対しては測定結果が安定するのは当然のことなのですが、簡単な測定例だけを見てチェックを終えてしまうことには注意が必要です。では「難しい」測定とはどのような試料を測定するときなのでしょうか?測定難易度が難しい条件には以下のようなものが挙げられます。
- 誘電率よりも誘電正接のほうが測定が難しい(10倍以上難しいイメージ)
- 誘電正接が小さいほど測定が難しい
- 誘電正接は試料が薄いほど測定が難しい
- 導電率は導電率が高いほうが測定が難しい
- 周波数は高いほうが測定が難しい
誘電率測定の場合、最も測定が難しいのは誘電正接が小さい試料の測定です。例えば以下のように周波数特性がしっかり載っている測定例を載せていたとします。

どちらもきれいに測定できているように見えますが、B社のほうが誘電正接が一桁小さい素材を測定しており、実はこの測定難易度には天と地ほどの差があります。測定難易度の高いデータがあれば、それより簡単な素材の測定については安定して実施できると推測できます。
また、導電率測定の場合、導電率の高い素材のほうが測定難易度が高く、周波数が高い方が測定難易度が高いです。導電率が約3.5x10^7 S/m(比導電率にして0.6)以上がきちんと測れる装置であるか、しっかりと確認しましょう。

複数種の治具で同じ値がでるか?
現状、誘電率の世界標準試料は存在しないため、測定値の絶対値を議論することはできません。ですが、理論・計算がまったく異なる複数の治具で同じ試料を測定し、同じ結果が得られたとしたら、それらの治具は安心して使うことができるでしょう。このように複数治具の測定値の相関を確認することは各メーカーの実力をチェックするの非常に有効です。
EMラボでは、以下の測定例に複数治具で同じ試料を測定した際の結果を公開しています。測定原理・計算方式が異なる3種類の治具で同じ素材を測定し、一貫性のある結果を得られることを示しています。
まとめ
本記事では、誘電率測定装置を選定する際に必ずチェックする測定例に対し、その見方について解説しました。測定例のチェックは着目する点をあらかじめ把握していれば難しいことはありません。確認ポイントをチェックしながら、安心して測定を任せられる装置を見つけてください。一方で、測定例だけでは見えないこともあります。測定にかかる時間が異様に長いような装置だと、導入はためらわれるでしょう。信頼できる値がどのように得られるのかについては、実際に測定に立ち会い、ご自身の目で確認されるのが一番です。
上の例の「A社」「B社」って・・・
ちなみに、上の例で示した「B社」の測定例は、実はすべてEMラボの装置で実際に測定して得たデータです(「A社」の例は記事用に作成した架空のデータです)。ほかにも、EMラボでは各装置の測定例を多数公開しています。装置の実力をじっくりとご確認ください。また、受託測定への立ち会いも歓迎しております。お気軽にご相談ください。


